photo:NATSUKI MIZUTANI
清澄白河にある築38年マンションの1住戸のリノベーションである。
住戸は13階の角部屋に位置し、住戸とほぼ同じ面積のルーフテラスを持つ。マンションの前には川が流れており、周辺には高い建物がないためとても環境の良い場所であった。
しかし内部は階高が低く、普通に床と天井を仕上げると2200mm程しか確保ができない。また、バルコニーに面するサッシも高さが低いため、せっかくの開放感が感じられない内部環境であった。
極小空間が豊かな空間をつくる
そこで、水回りや収納などの居室以外の空間の天井高さを低く抑え、リビングやダイニングなどの居室をコンクリート躯体を表しにすることで最大限天井高さを確保した。スケルトンの空間の中に、水回りやパントリーなどを“ケース”に納めるような構成とし、内と外の構成を住戸内で演出している。そうすることで、日々の生活の中で空間を渡りあるく時にメリハリを生み、体感的に居室空間を開放的に感じられるようにコントロールした。
ケースの周りにリビングやダイニング、子どもの部屋、ソファのある居場所を設け、住戸の中で大小に回遊できるように動線計画をすることで、ひとつながりでありながらもそれぞれの居場所が場所性を活かしながら独立しすぎず干渉されすぎない関係性で存在している。
リビングと玄関に近い位置にある子どもの部屋には、通路的に利用する施主の意図により、あえて部屋の中に天井の高さの段差を設けている。この合板でつくられた天井部分は住戸中央のケースの形をオフセット(同じ平面寸法で構成)しており、素材が切り替わっても違和感なく溶け込んでいる。
一見ダイナミックな空間構成に見えるが、水回りや収納を含めたそれぞれの空間が複数の空間と関係性を持ちながらとても柔らかい関係性で成立している。夫婦・子どもの3人の関係性が子どもの成長に合わせて緩やかに変わりながら、この住居もその一員として加わって成長していけるようなおおらかさを持つことを目指した。